沖縄へもどり一年が経ちました

8月になりました。
沖縄県中城村にあるセプテットミュージックアカデミーにて音楽講師として勤め、丸一年が経ちました。
2019年8月所属時当初、数名だった担当人数でしたが…
今では40人近くのレッスン生と、日々、音楽体験を共有させていただいております。幼稚園年長さんから大人の生徒さんまで、たくさんのレッスン生から多くの学びを授かる毎日です。
なかでも、とある小学生のレッスン生との出会いは、私に多くの気づきを与えてくれました。
このレッスン生は自閉症に加え場面緘黙症、という心の特別な状態を持っています。家庭以外の外での場面では、発語や意思表示が困難なのです。
でもこの子は、信じられないくらいに音感が良く、メロディの言い当ては当然、和音も全て、音の指差しによる反応で答えます。
レッスン中の様子を見ていると、頭の回転も速い印象です。ですが、やはり私の問いかけに対する意思表示ができません…。
来る日も来る日も、コミュニケーションが取れず、私はとにかく自信を失う時間が多く続きました。
でも、ある時、そのレッスン生が笑顔を私にくれたのです。それは、なんてことのないタイミングでした。
楽譜のコピーを並べて、ピアノを弾き出す彼。
「あれ、〇〇くん、この楽譜の続きがないねぇ、あれ。私、うっかりしてただね、コピーした楽譜、きちんと渡して無かったのかねえ、。。??(バタバタ)あああ、、どうしよう、いまコピーしてくるねー、あぁ、どうしよ、センセ困ったよ、プリンタのインクが無いよう、、おおお。あ、レッスン時間、あと5分しかないねぇ(アタフタ)ってあれ!なんだ両面コピーじゃないかヽ(;▽;)ノ」と、
1人で仰々しくテンパる私。
ふと、鏡面仕上げのピアノの譜面台を覗くと、そこには彼の可愛い笑顔が写りこんでいるのです。声なく笑っている。私があたふたした様子を見て面白がっている。これまで見た事のない表情だ…
結局のところは、両面印刷になっていた譜面に気が付かず最後のページが無いとバタバタと大騒ぎしている私を見て、この子がひたすら笑っているだけの図だったんだけれども。笑
譜面台越しに見る、初めて見る彼の笑顔に、少し距離が縮まったような瞬間だった。
半年かかったけれど、すこしづつ私に安心してくれたのかなぁと。緊張が解れて、何より、まずは打ち解けくれたのかなぁと、少しだけ自信になった。
それからというもの、そのレッスン生は、教室にきた時は必ず目を見てニコッとしてくれる。意思表示をすることはまだまだ難しそうにしているのだけれど・・・
振り絞るように、一瞬だけ目を見て笑ってくれ、向き合ってくれる姿に毎回、感慨もひとしおなのです…

この子だけではなく、実家の音楽教室も含め、毎週ごとに色んな表情と成長を見せてくれるレッスン生全てに私の方が学びをいただくなあ…、とつくづくおもう毎日なのです。

音楽レッスンとは言えど、結局は人と人とのコミュニケーションが根幹です。どんな人に対してもリラックスしてコミュニケーションできる人ばかりではありません。
複雑な気持ちやさまざまな状態を抱え、コミュニケーションが困難な人もいます。子供でも大人でも。
レッスン業務以外にお世話になっている音楽療法(いずみ病院)の現場で感じている様々な印象もまた、レッスンで活かせたらいいなとも思っています。

一大決心をし、故郷沖縄へ戻ってきて丸一年。
バリバリと東京で演奏活動をしている仲間が眩しくて、羨ましいなと思う気持ちに押し潰されそうな時期もありました。でも、今は現在の私に与えられている毎日に喜びを感じます。
こんな素晴らしい機会や繋がりをくださるご縁には、
ただただ感謝しかありません。

Kozue Tsukayama Homepage

Composer, Arranger, Pianist, and Educator.......